ガイド波(その1)

コンテンツ
1.ガイド波の基本的な説明
2.ガイド波の特性
3.分散曲線の理解
 

1.ガイド波の基本的な説明


 ガイド波という用語は「平板や棒状材料,境界面を長手方向に伝播する超音波モード」の意味として非破壊評価分野では用いられることが多く,その長手方向に伝播する性質を用いて,長尺材料の長距離高速非破壊評価に利用できる.平板中を伝播するガイド波の一種としてラム波がよく知られている.実のところ,「ガイド波」という言葉は,ラム波による平板材料の長距離非破壊評価の研究を,配管や鉄道レールなどの長尺構造材料へ拡張したときに必要となり使われるようになったものである.その証拠に,ガイド波という言葉が一般的でなかった1990年初期の論文では,「配管中を伝播するラム波」とか,「円筒中を伝播する波」などという冗長な表現が使われていた.また,弾性波素子の分野では,ガイド波という総称表現は使っておらず,個別に「レイリー波」「表面SH波」「waveguide中を伝播する波」といった表現を用いていた.
 そこで,これら分野ごとの表現や観点の違いを整理するために,次の表にさまざまな分野で利用されるガイド波について表す.これらは代表的なものであり,コーティング手法の多様化,用いる材料形状の多様化に伴い,用いる波動形態も多様化する可能性は充分にあり,それぞれの分野でそれぞれ異なる用語を用いられていくことに注意する必要がある.


ガイド波の分類表

いくつかのガイド波の図
(SH波,ラム波,パイプ中を伝播するガイド波,任意形状断面(レール)のガイド波)
↑少し,読み込みが遅いかも知れません.


 
2.ガイド波の特性

 ガイド波は共振振動によるモードのため分散性,重畳(ちょうじょう)性という特徴がある.

分散性
 分散性とは,位相速度と群速度が異なり,速度が周波数などの関数になります.下の図は分散性を模擬的に示したものです.(マウスを乗せれば動きます) 青から赤までの周波数分布を持つ波が,伝播するにつれ分散していきます.



 また,単一周波数(バースト波)になるように励起した場合でも,位相速度と群速度が異なる場合は発信した波形と受信した波形の形は変わります.この場合波形は変わりますが,周波数成分は変化しません.


重畳性
 同じ周波数にも関わらず伝播するモードが複数あり,モードごとの速度が異なるため,1つの波を励起しても受信波形が複数の波となります.これらのモードは独立しています.つまり,2つのモードが混ざって伝播することはないということです.これを重畳(ちょうじょう)性といいます.
 モードごとに分かれてしまうために欠陥探傷を行った場合,受信波形は,欠陥信号と反射信号の区別が難しく非常に困難です.以下に重畳性を模式的に表した動画を載せます.(マウスを画像の上に乗せると動きます) これは発信は一つのパルスですが,伝播していくうちに,速度の異なる3つのモードが現われます.そのため受信波形は,3つのパルス信号を受信するので,理解しにくい波形となります.




 ガイド波は長距離伝播が可能のため,今までの従来の超音波探傷と異なり,大型の材料の探傷が可能です.しかし,ガイド波用いるには,分散性,重畳性を理解し正しく使う必要があります.これらを理解するためには分散曲線に対する正しい理解が必要となりますが,上手く使うことが出来れば,新しい技術を開発できるかもしれません.

次は分散曲線について書いていきます. 次へ